水口みずぐち)” の例文
水口みずぐちからは水が随分盛んに落ちている。ここで雨さえやむなら、心配は無いがなアと、思わず嘆息せざるを得なかった。
水害雑録 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
やがてひるごろになっても扉があかないので、不思議に思って裏口へまわって窺うと、水口みずぐちの戸には錠がおろしてないとみえて、自由にさらりとあいた。
半七捕物帳:21 蝶合戦 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
「何だね、羅宇屋さん、裏へお廻り。」と、婆やが水口みずぐちの障子で怒鳴ると、白磨竹しろみがきを突着けられた千鳥の前は、拷問ごうもんの割竹で、胸をえぐられた体にぐなりとした。
日本橋 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「ございます、ございます」ガラリと開けた水口みずぐちの戸も開けっ放しに、鉄砲ざると一緒に入り込んだ。
鳴門秘帖:02 江戸の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
伊三いさどん、大変な道だろう。さアお上り。」水口みずぐちの障子を明けたかみさんは男の肩へ手をやって
雪解 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
奥へ通ると、水口みずぐちの方で、蓮葉はすはなような口を利いている女の声がする。相手は魚屋の若い衆らしい。
新世帯 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
とこれから路次の角から四軒目しけんめに住んで居りますから、水口みずぐちの処を明けて
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
婆さんは水口みずぐちの腰障子を開けると、暗い外へ小犬を捨てようとした。
奇怪な再会 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
わたしのうちでは父が死んだのちに、おなじ路地のなかで南側の二階家にひき移って、わたしの家の水口みずぐちがお玉さんの庭の板塀と丁度むかい合いになった。
綺堂むかし語り (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
家主おおやさん、水口みずぐちしきい修繕なおしてくれなくっちゃ困るじゃねえか。もう腐っているんだ』
鍋島甲斐守 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それから水口みずぐちの方へまわって、怪しい物のはいって来たという路すじを調べてみると、台所の柱に黒い手の痕のようなものが小さく薄く残っているのを見つけた。
半七捕物帳:19 お照の父 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
お銀はさらに台所へまわって、水口みずぐちの戸をすこし明けてうかがうと、溝口と元吉は女を介抱して奥へ連れ込んで行くらしい。元吉は夫婦者で、お新という若い女房がある。
有喜世新聞の話 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
半七はすこし考えていたが、やがて三畳から台所へ這い出して、水口みずぐちからそっと表へぬけた。
半七捕物帳:07 奥女中 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
彼女は水口みずぐちの障子をあけて、不審そうに半七らをながめていた。
半七捕物帳:47 金の蝋燭 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)