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みずぐち
「何だね、羅宇屋さん、裏へお廻り。」と、婆やが
水口の障子で怒鳴ると、
白磨竹を突着けられた千鳥の前は、
拷問の割竹で、胸を
抉られた体にぐなりとした。
「ございます、ございます」ガラリと開けた
水口の戸も開けっ放しに、鉄砲
笊と一緒に入り込んだ。
炬燵から
潜り出て、土間へ下りて橋がかりからそこを
覗くと、三ツの
水道口、残らず
三条の水が
一齊にざっと
灌いで、
徒らに流れていた。
手水を取るのに
清潔だからと女中が案内をするから、この
離座敷に近い洗面所に来ると、三カ所、
水道口があるのにそのどれを
捻っても水が出ない。