毛布ケツト)” の例文
豐田さんの家の奧の二階は廣い靜かな座敷で、そこに父は旅の毛布ケツトやら荷物やらを解き、暫時しばらく逗留しました。
酒にへてか、よろめく足元危く、肩には、古ぼけた縞の毛布ケツトをかけていたが、その姿から見ると、くるま夫ででもあろうか。年は女よりは三つばかり年長としかさに見えた。
もつれ糸 (新字旧仮名) / 清水紫琴(著)
海濱かいひん其處此處そここゝには、毛布ケツトや、帆布ほぬのや、其他そのほか樣々さま/″\武器等ぶきとう應用おうようして出來できた、富士山ふじさん摸形もけいだの、二見ふたみうら夕景色ゆふげしきだの、加藤清正かとうきよまさ虎退治とらたいぢ人形にんぎようだのが、奇麗きれいすなうへにズラリとならんだ。
燥々いら/\しながら立つて毛布ケツトをはたいた、煙草シガアの灰が蛇の抜殻のくづるる様にちる、私は熱湯の中に怖々おづ/\身体からだを沈める時に感ずる異様な悪感に顫へながら強ひて落着いた風をしてぢつと坐つて見た。
新橋 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)