たと)” の例文
ほゝは、山深きあたりの高き梢に塵寰ちりのよの汚れ知らず顔して、たゞ青雲あをぐもを見て嘯き立てる、気高さたとへんかた無し。
花のいろ/\ (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
尤も財産を作るには利殖の方法もあるし、たとえば定期市場に手を出すような方法もあるから、一概には云えないが、三度の火事は疑えば疑えない事はない。
支倉事件 (新字新仮名) / 甲賀三郎(著)
是れも男は天にたとえ女は地に象る云々と。是れ亦前節同様の空論にして取るに足らず。何が故に男は天の如く高くして女は地の如く低きや。男女、性を異にするも其間に高低尊卑の差なし。
女大学評論 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
ニイチエは後代のバラバたちを街頭の犬にたとへたりした。彼等は勿論バラバの所業に憎しみや怒りを感じてゐたであらう。が、クリストの所業には、——恐らくは何も感じなかつたであらう。
西方の人 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
此の月齡の第七八より第十五第十六に至る間の潮は、此れを氣に比すば、即ち張る氣のかたちである。其の後、漸々に低くなつて行く潮は、たとへば弛む氣である。
努力論 (旧字旧仮名) / 幸田露伴(著)