母者ははじゃ)” の例文
そうとは知らず、さきほどよりそちを疑ってさまざまのことを申したなれど、わしにとっては大事な母者ははじゃのことなれば、悪う思うてくれるな
亡霊怪猫屋敷 (新字新仮名) / 橘外男(著)
……母者ははじゃは地蔵尊を信仰なされ、わしも地蔵尊を身の守りにして来たが、しょせん地蔵菩薩ぼさつ御手みてでも救いがたい阿修羅の申し子だったとみえる
私本太平記:13 黒白帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
一昨日母者ははじゃ葬式そうしきをして沈んだ顔の仁左衛門さんも来て居る。余は高井戸の通りで失敬して、径路こみちから帰った。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
「お母さんですよ。コレ! おまえの母者ははじゃですよ」
丹下左膳:03 日光の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
母者ははじゃひとの御入来。
酒中日記 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
眉目みめい八、九歳の少年が「……お母さま……」と、大声を発し、あたりの者へ「母者ははじゃがいない……母者を捜して」
私本太平記:05 世の辻の帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
先日七のうちから茄子苗なすなえを買ったら、今朝七の母者ははじゃがわざ/\茄子の安否あんぴを見に来た。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
「そこには、おいとしい不知哉丸いさやまるさまも、とうにお帰りあって、日夜、母者ははじゃのお名を呼んでおられますものを……」
私本太平記:05 世の辻の帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
田圃向うの浜田のげんさんの母者ははじゃは、余のあざで特色ある人物の一人である。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
かつはまた、丹波の奥、梅迫うめさこの山家に難を避けておられる兄弟ふたりの母上、わしの妻子らも、早う都へ迎え取りたい。直義は久しく会わぬ母者ははじゃを見たいとはおもわぬか
私本太平記:12 湊川帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「ほ、来たな。今日は一人で来たか。いつも母者ははじゃに手を引かれている気ではいけぬ。いッそ一人で歩きつければ、今に、目明きよりは、よう見えて来るはずだぞよ」
私本太平記:02 婆娑羅帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
食らわせたとかいうあの事よな。よいではないか。わしはおもしろいと思うておる。ただし鎌倉の執権殿と、そなたの母者ははじゃには、べつな意味で、いずれへも聞かせられんがの。はははは
私本太平記:01 あしかが帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
母者ははじゃのお身は、ひとつ、兄のあなたへお願いしておく」
私本太平記:07 千早帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)