残懐なごり)” の例文
旧字:殘懷
貞造は、無事に健かに産れた児の顔を一目見ると、安心をして、貴女の七夜の御祝いに酔ったのがお残懐なごりで、お暇を頂いて、お邸を出たんです。
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
飯粒まんまつぶいてやった、雀ッ子にだって残懐なごりおしいや、蔦ちゃんなんか、馴染なじみになって、酸漿ほおずきを鳴らすと鳴く、流元ながしもとけえろはどうしたろうッてふさぐじゃねえか。
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
抱合って、目を見交わして、姉妹きょうだい美人たおやめは、身をさかさまに崖に投じた。あわれ、蔦にかずらとどまった、道子と菅子が色ある残懐なごりは、滅びたる世の海の底に、珊瑚さんごの砕けしに異ならず。
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)