残惜のこりを)” の例文
旧字:殘惜
しかし私の面会せぬうちに、鈴木君は亡くなつた。どんな説を持つてゐたか知らぬが、残惜のこりをしいやうな気がする。
津下四郎左衛門 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
奇麗きれいさらつてしまつて、井筒にもたれ、井底せいていふかく二つ三つの涌き口から潺々せん/\と清水の湧く音を聴いた時、最早もう水汲みづくみの難行苦行もあとになつたことを、嬉しくもまた残惜のこりをしくも思つた。
水汲み (新字旧仮名) / 徳冨蘆花(著)
併し自分の研究しなくてはならないことになつてゐる学術を真に研究するには、その学術の新しい田地でんぢを開墾して行くには、まだ種々いろいろの要約のけてゐる国に帰るのは残惜のこりをしい。あへて「まだ」と云ふ。
妄想 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)