武弁ぶべん)” の例文
それに、君には、新野しんやの地にもまだ日浅く、周囲には荊州の武弁ぶべん、都県の俗吏しか近づいていませんから、ご存じないのは当然です
三国志:06 孔明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「まあそんな調子でね、十二三の中学生でも、N閣下と云いさえすれば、叔父おじさんのようになついていたものだ。閣下はお前がたの思うように、決して一介の武弁ぶべんじゃない。」
将軍 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
あはれ、此舞臺にいくばくの人か登り得べきとおもふに、例の小芝居の習とて、中むかしの武弁ぶべんの上をしくめる大樂劇の、行列の幕あり戰鬪の幕あるものをさへ興行するなるべし。
三島中洲の撰した碑文と『尾張名所図会』の記事及び鷲津氏系譜の三種とを比較するに各異同がある。しかし武弁ぶべんの家から読書人を出したのは幽林応に始ったことは三者の言うところ皆同じである。
下谷叢話 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
あわれむべし、武弁ぶべんのほこりだけあって、敵を知らず、おのれをさとらず、ただ意気のみに燃ゆる猛勇の人。
新書太閤記:10 第十分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
さすがに武弁ぶべん一遍の頭領ではない、偉大なる政治家としての信長のすがたをここには見られるのであった。
新書太閤記:06 第六分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
三成も武弁ぶべん一片でない政治的な頭脳の持主であり、山城守も、弱冠じゃっかんすでに戦陣の武名をち得ていても、その本質はあくまで経世的な抱負ほうふにあり、そういう点でも、非常に
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
秀吉をるに、今は、家康でさえこう思意せずにいられないのに——佐々成政のごとき、単純なる一かい武弁ぶべんが、北陸の一隅などから、旧殻きゅうかくだっしきれない頭脳などをもって
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
上皇には、そんな御記憶もあって、忠盛を、一かい武弁ぶべんとばかりは、見ておられなかった。
お譲り下さるなどと、あまりに望外過ぎて、ご返辞にうろたえます。——それがしは元来、武弁ぶべんてつ、州の吏務りむをつかさどるなどということは、本来の才ではありません。まあ、まあ
三国志:03 群星の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
みな武弁ぶべんばかりなので、彼の夢に判断を下し得る者もなかった。
三国志:08 望蜀の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)