正午過ひるすぎ)” の例文
雨を帯びたる海棠かいどうに、廊下のほこりは鎮まって、正午過ひるすぎの早や蔭になったが、打向いたる式台の、戸外おもてうららかな日なのである。
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「いつ気がついたということはありませんが、不審をいだいたのは、あの日の正午過ひるすぎでしょう。園長が一向いっこう食事に帰ってこられませんでしたのでね」
爬虫館事件 (新字新仮名) / 海野十三(著)
仕方なしに正午過ひるすぎまで待って居りまして、午飯ひるはんたべるとたちまちに空が晴れて来ましたから
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
正午過ひるすぎから降り出した吹雪のために、集ったのはわずかに五人の男子でありましたが、五人はいつものように鹿爪しかつめらしくならないで、各々めいめい椅子を引き寄せてストーヴを取り囲み、ウイスキーを飲み
印象 (新字新仮名) / 小酒井不木(著)
三吉あおくなりて、「何、死んだと?」「はいさ、お前様、昨日きのうから腹がくだって、正午過ひるすぎに眼を落しました、誰も葬るものがござらぬで、な、お前さん。」と突然三吉のたもとつかみて
貧民倶楽部 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)