橢円形だえんけい)” の例文
旧字:橢圓形
上には、秋草の花をけた小花瓶を右左に置き、正面には橢円形だえんけいの小さな鏡を立て、其前に火を入れた青磁せいじの香炉、紫の香包をそばに置いた。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
然るに歌麿はまづ橢円形だえんけいの顔を作りいだしてその形式的なる面貌めんぼううちにも往々生々いきいきしたる精神を挿入そうにゅうし得たるは従来の浮世絵画中かつて見ざる所なり。
江戸芸術論 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
壁と円天井とは赤黒い塗料で塗り上げられ、あかほこりで黒ずんでいる床には、まるで二つの橢円形だえんけいの穴に水を張りでもしたように、石の浴槽が二つ、床面とすれすれにめ込んである。
わたしなどの知っているのは、藁を橢円形だえんけいにあんで、まわりをきれなどで飾ったものだが、ところによってはそでをつけ手を通すものもあり、または木でつくっただいのようなものもあるという。
母の手毬歌 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
そこへ雪が橢円形だえんけいのニッケル盆に香茶こうちゃの道具を載せて持って来た。そして小さい卓を煖炉の前へ運んで、その上に盆を置いて、綾小路の方を見ぬようにしてちょいと見て、そっと部屋を出て行った。
かのように (新字新仮名) / 森鴎外(著)
むかし目に見馴れた橢円形だえんけいの黄いろい真桑瓜は、今日こんにちではいずこの水菓子屋にも殆ど見られないものとなった。
西瓜 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
と云って、縁先えんさきえてある切株の上の小さな姫蘆ひめあし橢円形だえんけい水盤すいばんへ、そっこぶしの中のものを移した。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)