かんば)” の例文
九時五分尾根の一角に達して、其儘そのまま石楠の多い山の背を登って行くと、栂、かんばなどの大木が出て来る。
黒部川を遡る (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
仰ぎ見ると上流は、かんばつがの類が崖の端から幹と幹、枝と枝とをすり合せて奥へすくすくと立ち並んでいるのが眼に入る許りで、水は何処をどう流れて来るのか皆目分らない。
釜沢行 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
一面に青青と繁った短い笹を下草にしてかんばはんのきの類などの交ったつがの深い林である。それは勿論木立がそれ程珍らしい訳ではない、秩父あたりにもこれ位の森林はいくらもある。
秋の鬼怒沼 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
麓から山腹にかけて闊葉樹の大森林があり、次に闊葉針葉の混淆林が続き、その上にかんばなどの闊葉樹を散生した針葉樹の深林が黒々と繁っている。そこに森林の美しさが在ると思った。
黒部峡谷 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
尤もかんば類の霜葉は其量からも質からも素晴らしいものであることはうたがいを容れない。
尾瀬雑談 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
それで山田の通った所を廻ることにして、百米も下ったろう。すると好い工合に岩壁が崩れて其内側にかんばの立木が生え続いている所に来た。それを伝って下ると谷底に向って傾いた一枚岩の上に出る。
八ヶ峰の断裂 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)