槍術そうじゅつ)” の例文
渡辺も浪人から取立てられた者で、疋田ひきた流の槍の名手であり、刀法にも非凡な腕があった。食禄は二百四十石、家中の士に槍術そうじゅつを教えていた。
ところが寛文かんぶん七年の春、家中かちゅうの武芸の仕合しあいがあった時、彼は表芸おもてげい槍術そうじゅつで、相手になった侍を六人まで突き倒した。
或敵打の話 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
槍術そうじゅつの達人としては、高田郡兵衛の名はひびいているし、剣道にすぐれた者としては、堀部安兵衛などもいる。二十名と十一名とでも、所詮しょせん、対等には戦えまい。
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
丹後守は兵馬をつれて邸内の道場へ来ると、今まで話が槍術そうじゅつわたることをすら避けていたのに、ここで我から進んで身仕度みじたくをしてたすきをかけ、稽古槍を取り下ろしました。
その間の運搬は、それは静かに流れる川水にまかさねばならなかった。「拙者が——」と名乗って出た大沼喜三郎が、習いおぼえた槍術そうじゅつを役立てようと云うのであった。
石狩川 (新字新仮名) / 本庄陸男(著)
ここにおいてか、剣術の道場をひらいて少年をおしうる者あり(旧来、徒士以下の者は、居合いあい、柔術じゅうじゅつ足軽あしがるは、弓、鉄砲、棒の芸をつとむるのみにて、槍術そうじゅつ、剣術を学ぶ者、はなはまれなりき)
旧藩情 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
たしか過ぎて困るね。屋敷のものがみんな弱っている。もう八十近いのだが、人間も随分丈夫に製造する事が出来るもんだね。当人に聞くと全く槍術そうじゅつの御蔭だと云ってる。それで毎朝起きるが早いか槍を
趣味の遺伝 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「武芸は剣道か、槍術そうじゅつか……ただしは」