梅鉢うめばち)” の例文
やがて、加州の紋じるしらしい梅鉢うめばちの旗を先に立てて、剣付き鉄砲を肩にした兵隊の一組が三条の方角から堺町通りを動いて来た。公使一行を護衛して来た人たちだ。
夜明け前:03 第二部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
一つの扉にはあおいもんがあって、中に「贈正一位大相国公尊儀」と刻し、もう一つの方は梅鉢うめばちの紋で、中央に「帰真 松誉貞玉信女霊位」とり、その右に「元文げんぶん二年年」
吉野葛 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
と鶴の一声ひとこえで、たちまち結構なお料理が出ました。水飴をすてると、お手飼てがい梅鉢うめばちという犬が来てぺろ/\皆甜めてしまいました。それなりにりますとお庭先がしんと致しました。
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
先生は、例の通り、梅鉢うめばちの茶の三つ紋の羽織をせっかちに羽織りながら
平賀源内捕物帳:萩寺の女 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
猿股を配ってしまった時、前田侯から大きな梅鉢うめばちの紋のある長持へ入れた寄付品がたくさん来た。落雁らくがんかと思ったら、シャツと腹巻なのだそうである。前田侯だけに、やることが大きいなあと思う。
水の三日 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
そして肩には、梅鉢うめばちの紋打った旗さし物をかざしているのだった。
新書太閤記:02 第二分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)