東京こちら)” の例文
それも去年わたし共は東京こちらに來た時一度知らしたままでまだ郷里くにの方にはこちらに轉居したことを知らしてやらなかつたものですから
一家 (旧字旧仮名) / 若山牧水(著)
伊「いゝとこがありますぜ、東京こちらから遠くはありませんがね、わしが行って頼んだらすげなくも断るまいと思うんで、あれなら大丈夫だろう」
「嫂さんはあの通り餘り健康な方でないから第一東京こちらへ來るのが厭らしいが、併しもう觀念して居るさ」
四月にもなつたら、福岡から主人が一寸東京こちらへ來るんださうだから、さうしたら、無理にも結着がつくことになるだらう。元々實の父親てておやが子供を引き取らうといふのは當然だもの。
孫だち (旧字旧仮名) / 正宗白鳥(著)
むしろ黄道吉日をば待ちまして、唯今もって、東京こちら逗留とうりゅういたしておりまする次第で。
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「どこが悪いというでもないが、肺がちっと弱いから用心しろと言われたから、東京こちらで二三専門の博士を詮議せんぎしたが、事によったら当分逗留とうりゅうして、遊びかたがた注射でもしてみようかと思う」
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
ようようお若をなだめましたんで、ホッと一息つき、それでは手に手をとって駈落と相談は付けたものゝ、たゞ暗雲やみくも東京こちらをつッ走ったとて何処どこ落著おちつこうという目的めどがなくてはなりません
「でも皆ないい人たちですね。東京こちらに親戚がないから、人なつかしげで……。」
(新字新仮名) / 徳田秋声(著)