束髪たばねがみ)” の例文
旧字:束髮
そこに、女中……いや、中でも容色きりょうよしの仲居にも、ついぞ見掛けたことのないのが、むぞうさな束髪たばねがみで、襟脚がくっきり白い。
白花の朝顔 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
立女形たておやま、あの花形に、蝶蜂の群衆たかった中には交らないで、ひとり、束髪たばねがみの水際立った、この、かげろうの姿ばかりは、独り寝すると思ったのに——
白花の朝顔 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
狭い一室ひとまに、束髪たばねがみひっかけおびで、ふつくりしたい女が、糸車を廻して居たが、燭台につけた蝋燭ろうそく灯影ほかげに、横顔で、旅商人たびあきうど、私の其の縁続きの美男を見向みむいて
二世の契 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
店から呼んだ姥の声に、女房がちょっと会釈する時、束髪たばねがみびんそよいで、さきを急ぐか、そのまま通る。
草迷宮 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
往来ゆききには突懸つッかからず、ひょろついた揚句が大道へ筋違すじかいに寝て、捨鐘を打てば起きてくまで、当障あたりさわりはないからであったに、そのは何と間違ったか、門附の天窓あたま束髪たばねがみのまま砕けて取れよう
三枚続 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)