杜詩とし)” の例文
酒の酔いが回るにつれて、正香は日ごろ愛誦あいしょうする杜詩としでも読んで見たいと言い出し、半蔵がそこへ取り出して来た幾冊かの和本の集注を手に取って見た。
夜明け前:04 第二部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
洞庭湖どうていこ杜詩とし琵琶行びわこうの文句や赤壁せきへきの一節など、長いこと想い出すおりもなかった耳ざわりのいい漢文のことばがおのずから朗々ろうろうたるひびきをもっくちびるにのぼって来る。
蘆刈 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
かりそめにも嘘をつかじとて文学にも理想を排したるなるべく、た彼が愛読したりといふ『杜詩とし』に記実的の作多きを見ては、俳句もかくすべきものなりと自ら感化せられたるにもあらん。
俳人蕪村 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
竪固なる意思に制せられて謹厳に身をおさめたる彼が境遇は、かりそめにもうそをつかじとて文学にも理想を排したるなるべく、はた彼が愛読したりという杜詩としに記実的の作多きを見ては
俳人蕪村 (新字新仮名) / 正岡子規(著)