木曾川きそがわ)” の例文
新字:木曽川
こういう甥の話は、三吉の心を木曾川きそがわの音のする方へ連れて行った。ふるい橋本の家は、曾遊そうゆうの時のままで、未だ彼の眼にあった。
家:02 (下) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
信長のまわりには、二段三段と、大将をかこむ陣形ができて、やがて、国境の木曾川きそがわの東岸まで進んで来た。
新書太閤記:02 第二分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
この座敷から谷底の方に聞える木曾川きそがわの音も、正太には何の新しい感じを起させなかった。彼は森林の憂鬱にも飽き果てた。
家:01 (上) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
もう蟹江川かにえがわ筏川いかだがわ鍋田川なべたがわ——そして木曾川きそがわ口へかけてまで、数里の海岸線は、防柵ぼうさくいまわし、塹壕ざんごうをほり、障碍物しょうがいぶつをおき、全隊、汗みどろに、働いている。
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
その時は、ほかに連れもありましたが、なにしろ山坂は多し、木曾川きそがわづたいの道を女の足ではそうはかどらないものですから、途中二晩も泊まりました。
力餅 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
幾たび目かの、木曾川きそがわをわたり、翌日、二宮山にのみやざんに出て、敵情を偵察ていさつし、転じて、二十八日には、小折こおり附近の敵の散兵を掃討そうとうし、附近を、火攻めにして、ひっ返した。
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
皆さんにも聞かせたいのは、川上から大手橋おおてばしのほうへ流れる木曾川きそがわの音ですが、あの水が岩を越すよりもっと早く、夏の暑さが流れて行ってしまいました。
力餅 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
縄生は、桑名の西南一里ほどな地点、町屋川まちやがわに沿う一村落だが、木曾川きそがわ揖斐川いびがわなどの海口にも近く、水陸両軍をあわせて、信雄の根拠地をおびやかすには、絶好な指揮地にちがいない。
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それは木曾川きそがわ上流の沿岸から奥筋へかけての多数の住民の死活にもかかわり、ただ一地方の問題としてのみ片づけてしまえないことであった。それが山林事件だ。
夜明け前:04 第二部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
青いはすの葉をかさのかわりとは、木曾川きそがわへつりに行く人でも、ちょっと思い付きそうもないものです。
力餅 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
そう思いながら、なおその心地をたどりつづけるうちに、大きなかわの流れているところへ出た。そこは郷里の木曾川きそがわのようでもあれば、東京の隅田川すみだがわのようでもある。
夜明け前:04 第二部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)