服装なりふり)” の例文
旧字:服裝
極く服装なりふりに関わない学士も、その日はめずらしく瀟洒しょうしゃなネクタイを古洋服の胸のあたりに見せていた。そして高瀬を相手に機嫌きげんよく話した。
岩石の間 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
余所よそから来た先生ならうに問題になるのだが、同窓の先輩だから、皆恐れて勉強する。凡そ服装なりふりに構わないこと数学の教師より甚しいものはない。
母校復興 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
彼は綿密な性質で、服装なりふりなぞにあまりかまわない方の勉強家であるが、持って生まれた美しさは宿の人の目をひいた。
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
服装なりふりなぞはすこしも気に留めないような、質素な風采ふうさいの人であるが、どこかに長者らしいところがそなわっていた。
家:02 (下) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
揚羽屋では豆腐を造るから、服装なりふりに関わず働く内儀かみさんがよく荷をかついで、襦袢じゅばんの袖で顔の汗を拭き拭き町を売って歩く。朝晩の空にとおる声を聞くと、アア豆腐屋の内儀さんだとすぐに分る。
千曲川のスケッチ (新字新仮名) / 島崎藤村(著)