ぼや)” の例文
が、その笑いは再び他の笑いに消されがちになっていって、それと一緒にその可愛らしい image もだんだんぼやけていく。
三つの挿話 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
さびのある優しい声で。そして彼は急速力で走り出した機関車の窓から顔を出して場内を見返った。潤みかすんだ眼には停車場の赤や青の燈火が水にうつる影のようにぼやけて揺れていた。
汽笛 (新字新仮名) / 佐左木俊郎(著)
先生の消息がぼやけているうちは、まだ安心しているとは言いながら、心の底の方では重苦しく気がゝりでありましたが、こう事があらわになって来ますと、却って気持がさっぱりしてしまって
生々流転 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
やっとその人影は身を起し、蝙蝠傘をちょっと持ちかえてから歩き出した。そうしてずんずん霧のなかにぼやけて行った。
美しい村 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
私の視野のなかの現實の風景がずんずんぼやけてゆき、そしてその上に二重にも三重にも重なり合ひながら、昨日の失はれた風景が思ひがけず立ち現はれてくるのだが、それは例へば
水のほとり (旧字旧仮名) / 堀辰雄(著)