時致ときむね)” の例文
こう、為朝ためともは、おらが先祖だ。民間に下って剃刀の名人、鎮西八郎の末孫ばっそんで、勢い和朝に名も高き、曾我五郎時致ときむねだッて名告なのったでさ。
式部小路 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
路の左側に石の華表とりいのある社は、河津八幡宮かわづはちまんぐうで、元の祭神は天児屋根命あまこやねのみことであったが、後に河津三郎祐泰さぶろうすけやす及びその子の祐成すけなり時致ときむねの三人を合祀ごうししたものであった。
火傷した神様 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
その夜のうちにうちつれて出発、北条時政を訪ねて元服の式を終り、ここに箱王は五郎時致ときむねとなった。
曽我の暴れん坊 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
腕からすべって羽織の裾に取りつき、錣引しころびきが草摺引くさずりびきになったけれども、このたびの朝比奈もまた、あまりに意気地のない朝比奈で、五郎時致ときむねは、またあんまりふざけ過ぎた五郎時致でありました。
大菩薩峠:19 小名路の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
この意気なればこそ、三日握り詰めたお夏の襟をそった剃刀に、鎮西五郎時致ときむねが大島伝来の寐刃ねたばを合わせたとはいえ、我が咽喉のどならばしらず、いかで誤ってお夏の胸を傷つけんや。
式部小路 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)