日蝕にっしょく)” の例文
すなわち三時間の間やみとなったのです。暦で計算してみるとこれは日蝕にっしょくのあった時ではないから、他の理由でかかる異変が起こったのです。
日蝕にっしょくがあるからそれを見にまた出懸ける、東洋じゃほとんど皆既蝕かいきしょくだ。)と云いましたが、まだ日本には、その風説うわさがないようでございますね。
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
これらの記事を日蝕にっしょくに比べる説もあったようであるが、日蝕のごとき短時間の暗黒状態としては、ここに引用した以外のいろいろな記事が調和しない。
神話と地球物理学 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
「算法家は六七十年もさきの、日蝕にっしょくを数えだすことができるそうです、けれどもそういう算術を知らぬ者は、その日その刻が来るまでは、決して信じはしないでしょう」
山彦乙女 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
日蝕にっしょくどころではない。何十日何百日、いや何十年何百年と、まっくらになったのだ。太陽の光が、さっぱり地上へとどかなくなったものだから、地球の表面は、急に冷えだした。
氷河期の怪人 (新字新仮名) / 海野十三(著)
ここ四、五日青空をみせて、ひよ、もずの高音に穂すすきの根の土も乾きかけて来たかと思うとまた、野末の果てから背のびをした密雲が、見るまに坂東一帯を、日蝕にっしょくのように暗くしてしまった。
宮本武蔵:06 空の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
日蝕にっしょくの時のような、草のまだらに黒い、もうとした月明りに、そこにしゃがんだ男がある。
星女郎 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
日蝕にっしょく観測の結果がかなりまで彼の説に有利であっても、それはこの理論の確実性を増しこそすれ、厳密な意味でその絶対唯一性を決定するに充分なものであるとはにわかには信じられない。
相対性原理側面観 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)