施粥せがゆ)” の例文
前年の飢饉には、供御くごの物も減ぜられ、吏を督して、米価や酒の値上りを正し、施粥せがゆ小屋数十ヵ所を辻々に設けて、飢民きみんを救わせ給うたとも説く。
私本太平記:01 あしかが帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
一年まえから、市中の数カ所に『お救い小屋』が設けられ、またしばしば施米せまい施粥せがゆが行われた。それは、そのとおりであるが、規定どおりに行われることはなかった。
花も刀も (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
穀倉院の在庫高は、洛内の窮民に、施粥せがゆの炊き出しをするだけでも、日々、気がひけるほど減ってくる。
平の将門 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
修羅妄執のちまた、とよそにみくだすだけである、戦火に逐われる民たちにも一椀の施粥せがゆをすれば能事足れりとしている、衆生済度というのは口舌の理想で、じっさいにはまったく衆生と交渉がない
荒法師 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
式の翌る日からは、貧民への餅撒もちまきやら、施粥せがゆやら、寺院への勧進かんじんやら、それも済むと、新郎新婦は、やがて、新しい愛の巣へ、二人だけで移って住むことになった。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
人々が立つ頃、八幡がねも明けのらせをいた。大太鼓が鳴りとどろき、施粥せがゆが始まった。
大岡越前 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
杖に身をささえ、跛足びっこをひいた一人の若僧が、網代笠あじろがさおもてをつつみ、施粥せがゆの列に交じっていたが、やがて自分の順番になると、鉄鉢を出して、僧侶らしく、ていねいに頭を下げた。
大岡越前 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そこで即日、大赦たいしゃれいを発せられ、施薬せやく施粥せがゆの小屋を辻々におき、なおまた、かくは、臣洪信こうしんを遠くにおつかわしあって、当山の虚靖天師きょせいてんしに、病魔調伏ちょうぶくの祈りを、おん頼みあった次第である。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そんなこた、おらだッて知ってらい。だが、施粥せがゆ
大岡越前 (新字新仮名) / 吉川英治(著)