新盆にいぼん)” の例文
実をいうと名誉の最期をとげたあのかわいくて小さかった善光寺たつ新盆にいぼんが迫ってきたので、お手製の精霊しょうりょうだなをこしらえようというのでした。
右門捕物帖:23 幽霊水 (新字新仮名) / 佐々木味津三(著)
衷氏が歿くなった時のお通夜や、仏事の日などは、ありとある部屋に、幾組といってよいかわからぬほどのお客をして接待した欣々女史、その新盆にいぼんには
江木欣々女史 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
その新盆にいぼんのゆうべには、白い切子燈籠の長い尾が、吹くともない冷たい風にゆらゆらとなびいて、この薄暗い灯のかげに若い師匠のしょんぼりと迷っている姿を
半七捕物帳:05 お化け師匠 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
……万和は、たとえ娘が死んでも、いちど約束したのだから婿も同然と母家から離れた数寄屋のひと構えに金三郎を住わせ、じぶんの息子のようにもてなしていた。……そうするうち、お梅の新盆にいぼん
顎十郎捕物帳:20 金鳳釵 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
新盆にいぼんに、切籠きりこげて、父親おやじと連立って墓参はかまいりに来たが、その白張しらはりの切籠は、ここへ来て、仁右衛門爺様じいさまに、アノ威張いばった髯題目ひげだいもく、それから、志す仏の戒名かいみょう進上しんじょうから、供養のぬし、先祖代々の精霊しょうりょう
縁結び (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
ことしは新盆にいぼんであるから、殿さまと姉の墓まいりに行くなどと、彼は話して帰った。折りから表を通る燈籠売りの声も、きょうの半七には取り分けてさびしくきこえた。
半七捕物帳:61 吉良の脇指 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)