斜交はすか)” の例文
それはいい、そこまではいいんだが、やがてお松は酌をしながら、斜交はすかいにこっちをにらんで、浮気をしちゃあいやよといった。
斜交はすかいの席に、この出来事を笑いながら見ていた、この地方の人らしい五十恰好かっこうの和服の男が、そう云いながらその缶を取って
細雪:03 下巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
「やっ……。これは」やがて愕然がくぜんと気づいたのは、常に人々の出入りする表の門に、大きな丸太が二本、斜交はすかいに打ちつけてあり、そこに、何やらかみの高札らしいものが掲げてあった。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
登の視線を感じたからだろう、登を斜交はすかいにすばやく見て、さっと頬を染めながら会釈をし、南の口のほうへ小走りに去った。
染次姐さんの幽霊は上半身をくねらせ、こっちを斜交はすかいににらみ、そうしてなまめかしくたもとで打つまねをした。
ゆうれい貸屋 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
紀伊は含み笑いをし、斜交はすかいに、広一郎を見あげた。彼は眩しそうに眼をそらした。しかし眼をそらしたとたんに、ひょいと天床を見あげ、その唇をとがらせた。
女は同じ物語 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
その井戸から斜交はすかいになった長屋の一軒、表にもう葉の黄色くなったなにかの鉢物を五つ六つ並べ、腰高障子に「忠」という字の書いてある家を伝七郎はおとずれた。
恋の伝七郎 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
女は斜交はすかいに万三郎をにらんだ。ひどく嬌めかしい睨みかたで、万三郎には眩しいくらいであった。
風流太平記 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
「そうね、御存じないのがあたりまえですわね」とおみやはなまめかしいしぐさで、裾前や衣紋を直しながら、斜交はすかいに男を見た、「あたしあなたと同じ屋敷にいますの」
するといしは眼尻をさげ、唇をだらしなくあけてへへへと笑い、斜交はすかいに保馬を見た。
いしが奢る (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
男は三之助と斜交はすかいに坐った。それから莨入たばこいれ燧袋ひうちぶくろを出して、煙草を吸いつけた。
暴風雨の中 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
かよはあらわな胸を彼のほうへ向け、眼を細めて、斜交はすかいにじっと見あげた。
風流太平記 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
「あたしも酔うわ」と、お豊はみだらな眼つきで、幹太郎を斜交はすかいに見ながら云った、「酔ってあんたを困らしてあげるわ、今夜こそあんたを困らしてあげる、いいこと、覚悟してちょうだい」
花も刀も (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
女は斜交はすかいにこっちを見あげた。
風流太平記 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)