“文色(あいろ)” の例文
氷の如き宮が手を取り、犇(ひし)と握りて、永く眠れる面(おもて)を覗(のぞ)かんと為れば、涙急にして文色(あいろ)も分かず、推重(おしかさな)りて、怜(いと)しやと身を悶(もだ)えつつ少時(しばし)泣いたり。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
海の文色(あいろ)もどッぷりと暮れ落ちると、伝吉は初めて、根(こん)を疲らしたようにガッカリとして
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
彼の階子(はしご)を下り行くと斉(ひとし)く貴婦人は再び鏡(グラス)を取りて、葉越(はごし)の面影を望みしが、一目見るより漸含(さしぐ)む涙に曇らされて、忽(たちま)ち文色(あいろ)も分かずなりぬ。彼は静無(しどな)く椅子に崩折(くづを)れて、縦(ほしいま)まに泣乱したり。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)