散髪ざんぎり)” の例文
旧字:散髮
ぞろりとした半元服、一夫数妻いっぷすさい論の未だ行われる証拠に上りそうな婦人も出た。イヤ出たぞ出たぞ、坊主も出た散髪ざんぎりも出た、五分刈も出たチョン髷も出た。
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
この芝居はわたしも母や姉と一緒に見物したが、一番目は「満二十年息子鑑まんにじゅうねんむすこかがみ」という徴兵適齢を取扱った散髪ざんぎり物で、すこぶる面白くない物であったように記憶している。
明治劇談 ランプの下にて (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
欠火鉢かけひばちからもぎ取って、その散髪ざんぎりみたいな、蝋燭の心へ、火を移す、ちろちろと燃えるじゃねえかね。
菎蒻本 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
両方の手で分けて見たりなんかするのは可笑おかしゅうございますが、其の頃は散髪ざんぎりに成っても洋服を召しても、未だ懐中ふところには煙管筒きせるづゝの様にして、合口の短刀を一本ずつ呑んでったもの
松と藤芸妓の替紋 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
実に昔切り立てには何故いやなんな頭をするか、厭らしい延喜えんぎのわりい、とよく笑いましたものであったが、散髪ざんぎりが縁起が悪い頭だか、野郎頭の方が縁起が悪いのかとんと分りませんが
松と藤芸妓の替紋 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
清玄せいげん散髪ざんぎりに書きかえたような三幕物、その主人公の教心という僧を上京中の鴈治郎がんじろうがつとめていたが、名題の“土産”の二字を一字にして、土偏に産の字をつけたのは珍らしいといわれた。
明治劇談 ランプの下にて (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
美代吉に悦ばせる心算つもりゆえおおめかしで、其の頃散髪ざんぎりになりましたのは少なく、明治五年頃から大して散髪ざんぱつが出来ましたが、それでも朝臣ちょうしんした者は早く頭髪あたまを勧められて散髪ざんぎり成立なりたてでございますが
松と藤芸妓の替紋 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
その扮装は散髪ざんぎり頭に白のうしろ鉢巻をして、黒木綿の筒袖つつそで小倉こくら滝縞たきじまはかまをはいて、陣羽織を着て日の丸の扇をひらいて、大きな口をあいて皺枯しわがれ声を振り立てて、かのオッペケ節を歌うのである。
明治劇談 ランプの下にて (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)