“擡(もたげ)” の例文
この障礙は上(かみ)に抽斎の経歴を叙して、その安政中の末路に近づいた時、早く既に頭(こうべ)を擡(もたげ)げて来た。これから後(のち)は、これが弥(いよいよ)筆端に纏繞(てんじょう)して、厭(いと)うべき拘束を加えようとするであろう。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
和尚が長い頭巾の頭(ず)を、木菟(みみずく)むくりと擡(もたげ)ると、片足を膝頭(ひざがしら)へ巻いて上げ、一本の脛(すね)をつッかえ棒に、黒い尻をはっと振ると、組違えに、トンと廻って、両の拳(こぶし)を、はったりと杖に支(つ)いて
白金之絵図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
◎木挽町(こびきちょう)五丁目辺の或る待合(まちあい)へ、二三年以前新橋(しんばし)の芸妓(げいぎ)某が、本町(ほんちょう)辺の客を咥(くわ)え込んで、泊った事が有った、何でも明方だそうだが、客が眼を覚して枕を擡(もたげ)ると、坐敷の隅(すみ)に何か居るようだ
枯尾花 (新字新仮名) / 関根黙庵(著)