撤回てっかい)” の例文
この後の、御方針は、何となされるか。いったん小牧の兵は撤回てっかいされても、ゆくゆくのお考えもまた、おもちでござろうが
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
智子が必死の思案の果てに思極めたことは——智子がなまじ自分の智能を過信して夫を眼開きの世界へ連れて来ようとした無理を撤回てっかいすることだった。
明暗 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
犬はしばらく強情ごうじょうに、「一つ下さい」を繰り返した。しかし桃太郎は何といっても「半分やろう」を撤回てっかいしない。
桃太郎 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
校長はいくども阪井の家をうて退校届けの撤回てっかいをすすめたがきかなかった。
ああ玉杯に花うけて (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
政府で選定した専門家である審査員が選定したものでも警視庁なり、内務省なりの役人が検査をしてそのために陳列を撤回てっかいさせたり、その検査ののちでないと一般にも公開を許さない世の中である。
国民性の問題 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
「すると、痣蟹が吸血鬼だという君のいつかの断定だんてい撤回てっかいするのだネ」
恐怖の口笛 (新字新仮名) / 海野十三(著)
留学作品として「春」と「選ばれたる乙女」が提出されたが、「管弦楽にあるまじく嬰へ長調」で書かれているという理由で、後者は拒絶され、「春」の方はドビュッシー自身が撤回てっかいしてしまった。
楽聖物語 (新字新仮名) / 野村胡堂野村あらえびす(著)
自説の形勢ことごとく非なるを見て、にわかに前言を撤回てっかいし、からくもこの場を切り抜けたというかたちである。
新書太閤記:08 第八分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ええ、近藤さんの木版画と、花房さんやわたしの油絵と——それから西洋の画の写真版とを陳列しようかと思っているんです。ただ、そうなると、警視庁がまた裸体画は撤回てっかいしろなぞとやかましい事を
路上 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
また、和議をはかったところで、あれだけの地域に膠着こうちゃくされていた大軍を急に撤回てっかいして、上洛して来るなどは思いもよらない。到底、至難なことである。と絶対に信じていたものらしかった。
新書太閤記:08 第八分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)