描出えがきいだ)” の例文
国貞は美貌の侍女じじょ貴公子が遊宴のじょうによりて台榭だいしゃ庭園ていえんの美と衣裳什器じゅうきの繊巧とを描出えがきいだして人心を恍惚こうこつたらしめ
江戸芸術論 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
巡査の靴音が橋の上にんで、背後向うしろむきのその黒い影が、探偵小説の挿画さしえのように、保険会社の鉄造りの門の下に、寂しく描出えがきいだされた時、歎息とともに葛木はそう云った。
日本橋 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
されどかくの如く死したる典型のうち歌麿はその技術の最も円熟したる時代にありては全く不可思議なる技能を以てく個人の面貌の異なる特徴を描出えがきいだし見るものを
江戸芸術論 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
いずれも市井しせいの特色を描出えがきいだして興趣津々しん/\たるが中に鍬形蕙斎くわがたけいさいが祭礼の図に、若衆わかいしゅ大勢たいぜい夕立にあいて花車だしを路頭に捨て見物の男女もろともに狼狽疾走するさまを描きたるもの
夕立 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
この鮑取三枚続は婦人の裸体をば最も明晰めいせきなる手法によりて描出えがきいだしたるものなり
江戸芸術論 (新字新仮名) / 永井荷風(著)