捕繩とりなわ)” の例文
新字:捕縄
名主文太夫は、野半天のばんてん割羽織わりばおりに、捕繩とりなわで、御領私領の入れまじった十一か村の秣場まぐさばを取り締まっているような人であった。
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
ひらりと横ッ飛びに逃げ退いた釘勘は、所詮しょせん、手元に近づき難いものと見て、十手を口に預けるが早いか、前の捕繩とりなわを輪に手繰たぐって、その分銅の先を、鶺鴒せきれいの尾のように微かに振りながら
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それでも悪い事をする人間は可哀かわいそうなんだ、悪い事をするたんびに、十手でなぐられ捕繩とりなわで縛られるより、もっともっと自分で自分を悔んでるんだ、——おれだってまともな性分に生れたかったよ
あすなろう (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
突然、金右衛門をそこへ倒したのは一条の捕繩とりなわです。
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)