“捏返（こねかえ）” の例文
閑話休題（それはさておき）日和下駄の効能といわば何ぞそれ不意の雨のみに限らんや。天気つづきの冬の日といえども山の手一面赤土を捏返（こねかえ）す霜解（しもどけ）も何のその。
日和下駄：一名　東京散策記 (新字新仮名) ／ 永井荷風(著)
ヤッサモッサ捏返（こねかえ）している所へ生憎（あやにく）な来客、しかも名打（なうて）の長尻（ながっちり）で、アノ只今（ただいま）から団子坂へ参ろうと存じて、という言葉にまで力瘤（ちからこぶ）を入れて見ても、まや薬ほども利（き）かず
浮雲 (新字新仮名) ／ 二葉亭四迷(著)
早や金色に晴れ渡った空の下に、茅場町の大通りは捏返（こねかえ）すようだった。
釘抜藤吉捕物覚書：03 三つの足跡 (新字新仮名) ／ 林不忘(著)
此処で又紛々（ごたごた）と入乱れ重なり合って、腋の下から才槌頭（さいづちあたま）が偶然（ひょっ）と出たり、外歯（そっぱ）へ肱が打着（ぶつ）かったり、靴の踵（かかと）が生憎（あいにく）と霜焼（しもやけ）の足を踏んだりして、上を下へと捏返（こねかえ）した揚句に、ワッと門外（もんそと）へ押出して
平凡 (新字新仮名) ／ 二葉亭四迷(著)