振顧ふりかへ)” の例文
母親に手を引かれて行く子供をると、別にそれが綺麗な子でなくても、ぽちや/\肥つてさへゐれば、蓮見はすみに何とか話しかけて振顧ふりかへるのであつた。
チビの魂 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
鈍い歩調あしどりで二三十歩、俛首うなだれて歩いて居たが、四角よつかどを右に曲つて、振顧ふりかへつてモウ社が見えない所に來ると、渠は遽かに顏を上げて、融けかかつたザクザクの雪を蹴散し乍ら、勢ひよく足を急がせて
病院の窓 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
「貴女こゝでおりてもかつたんですか。」青年は彼女を振顧ふりかへつて、おど/\した口調でいた。
復讐 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
十間も行くと、旅館の角に立止つて後を振顧ふりかへつたが、誰も出て見送つてる者がない。と渠は徐々そろそろ歩き出しながら、袂を探つて何やら小さい紙包を取出して、旅館の窓から漏れる火光あかりひらいて見たが
病院の窓 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
と同時に肉体の温みを感じ合ふくらゐに近接してゐた一人の青年の顔を振顧ふりかへつた。
復讐 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
鈍い歩調あしどりで二三十歩、俛首うなだれて歩いて居たが、四角よつかどを右に曲つて、振顧ふりかへつてもモウ社が見えない所に来ると、渠はにはかに顔を上げて、融けかかつたザクザクの雪を蹴散し乍ら、勢ひよく足を急がせて
病院の窓 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)