挑発ちょうはつ)” の例文
旧字:挑發
ソウナッタ時ニ、ソレヲ挑発ちょうはつシタ者ハ誰デモナイ僕デアッタトスルト、責メラレテヨイノハ僕ノミデアル。彼ニ責任ハナイヿニナル。
(新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
絵本西遊記えほんさいゆうき」を読んだのもそのころであったが、これはファンタジーの世界と超自然の力への憧憬どうけい挑発ちょうはつするものであった。
読書の今昔 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
自由で自分の意志を確信してるクリストフは、挑発ちょうはつ的な興味で、無産者らの同盟を見守っていた。民衆の酒樽さかだるに浸るのがうれしく、そうすると気が和らいだ。
自分の姿を木部に見つけ出したように思って、一種の好奇心を挑発ちょうはつせられずにはいなかった。
或る女:1(前編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
それでも始の内は滑稽こっけいも構わず暇がかかるのもいとわず平気でやっていたが、しだいに僕の好奇心を挑発ちょうはつするような返事や質問が千代子の口から出て来るので、僕はこごんだまま
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
彼は自分をあやしまずにはいられなかったが、けだし平中の思慕の情は、夫人が彼の及び難い高根たかねの花になったと云う事実に依って、挑発ちょうはつされたところもあろう。
少将滋幹の母 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
そしてその嫌悪の情からまた挑発ちょうはつされた。彼は自分自身と争った。どちらに真のクリストフがあるかわからなかった。盲目的な力が襲いかかってきた。いくらそれをのがれようとしても駄目だめだった。
その辺に転がっていた屍骸の鼻を缺いて来て桔梗の方の敵愾心てきがいしん挑発ちょうはつする道具に使ったのであろう。
そして二、三日のうちに、近隣のよしみによるふだんの関係から、戦争に先立つ挑発ちょうはつ的な調子に変わっていった。この状況に驚く者は、理性が世界を統べるという幻のうちに生きてる人々ばかりだった。