拍子びょうし)” の例文
それから先は、とんとん拍子びょうしに嬉しくなって、曲れば曲るほど地面が乾いて来る。しまいにはぴちゃりとも音のしない所へ出た。
坑夫 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
といって、拍子びょうしに五、六間もあとへ持ってゆかれれば、グッタリとしてあごの下が紫色になりおわるのは必然なこと。
鳴門秘帖:01 上方の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
こう三拍子びょうし揃ったうえに、喬之助と右近、てんで見分けがつかないというのだから、まことにまぎらわしい話で、いのちを狙われる十七人の身になってみると、それは
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
旧人も新人もたくさんあるだろうが、ドイツ系の女流歌手で、これくらい、頭脳と技巧と声と三拍子びょうし揃った人はない。それにレーマンにはまだ幾分の若さと魅力がある。
時と所と人と、三拍子びょうしそろって、あの歴史的なスパイ戦線の尖端せんたんに踊りぬいていたのだった。
戦雲を駆る女怪 (新字新仮名) / 牧逸馬(著)
分かりやすく例を取りてみれば、商戦に従事する者はもくろみ通りに成功し、いわゆるトントン拍子びょうし身代しんだいをふやし、または営業を拡張することあるも、これは決していつまでもつづくものではない。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
「ありゃ実際意外だった。あんなに、とんとん拍子びょうしにあがろうとは思わなかった」と胡麻塩ごましおがしきりに胡麻塩頭をく。
野分 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
またたちまち、百雷のような銅鑼どらの乱打がどこかでする。銅鑼の打ち方もただの戦陣拍子びょうしでなく、まるで人を揶揄やゆするようなはやし方としか聞えない。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
……の、「描いたッ!」が終った一拍子びょうし、倒れ伏さった屏風に片足かけた右近。
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)