打衝ぶつ)” の例文
お勢の、壁虎やもりの背のような怨み深げな顔……、成戸の、打算にけた白々とした眼も……苦々しく、打衝ぶつかり合うが、言葉は出ない。
地虫 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
打衝ぶつかる処で打衝かつて破滅する時に破滅する。アヽ、自殺がしたい。二度も三度も自殺がしたい。
下から投げ上げたにしたところで、五尺とない塔の狭間はざまのどこかに打衝ぶつかってしまうぜ。
聖アレキセイ寺院の惨劇 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
そのおり、海は湧き立ち泡立って、その人たちにあらんかぎりの威嚇いかくあびせた。けあとの高いうねりが、岬の鼻に打衝ぶつかると、そこの稜角で真っ二つにち切られ、ヒュッと喚声をあげる。
潜航艇「鷹の城」 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
一人の女と一人の女形おやま、その美しい円味まるみ、匂いこぼれるようななまめかしさ、悩ましさはともかくとして、おりふし「青楼十二時」でもひもどいて、たつこくの画面に打衝ぶつかると、ハタと彼は
人魚謎お岩殺し (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)