我楽多がらくた)” の例文
旧字:我樂多
すると浅果あさはかな男心は直ぐ我楽多がらくたのやうな、ぞんざいなあしらぶりを見せて、うかすると神様の傑作に対して敬意を失するやうな事になる。
ただ実父が我楽多がらくたとして彼を取り扱ったのに対して、養父には今に何かの役に立てて遣ろうという目算があるだけであった。
道草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
横浜へ来てから、さんざん着きってしまった子供の衣類や、古片ふるぎれ我楽多がらくたのような物がまたこおりも二タ梱も殖えた。
足迹 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
そこには笹竹ささだけや芹などの雑草が生え、塵芥にまみれて捨てられてる、我楽多がらくたの瀬戸物などの破片の上に、晩春の日だまりが力なく漂っているのである。
郷愁の詩人 与謝蕪村 (新字新仮名) / 萩原朔太郎(著)
一口に我楽多がらくたというが、その我楽多道具をよほど沢山に貯えなければ、人間の家一戸を支えて行かれないものであるということを、この頃になってつくづく悟った。
十番雑記 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
もっとも『我楽多がらくた文庫』はそれより二タ月前頃から公刊されていたが、飯田町の国学院大学の横町の尾崎の家を編輯所兼発行所としていた頃には誰にも余り知られなかった。
最初は多少蜀山人しょくさんじんに私淑したかの書体であった。我楽多がらくた文庫や新著百種の表紙の文字がそれである。しかし後には追い追い老熟した筆致を示し、山人独特の文字となった。
明治世相百話 (新字新仮名) / 山本笑月(著)
「そんならじんちゃん、お前さんに言うがね。お前はお金持になったんだから、引越しだってなかなか御大層だ。こんな我楽多がらくた道具なんか要るもんかね。わたしに譲っておくれよ、わたしども貧乏人こそ使い道があるわよ」
故郷 (新字新仮名) / 魯迅(著)
私はその道具屋の我楽多がらくたといっしょに、小さいざるの中に入れられて、毎晩四谷よつやの大通りの夜店にさらされていたのである。
硝子戸の中 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
お庄はじれったいような体を、窓から引っ込めて行くと、自分たちの荷物や、この家の我楽多がらくたの物置になっている薄暗い部屋へ入って、隅の方に出してある鏡立ての前にしゃがんだ。
足迹 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
お延は戸棚とだなを開けて、錠を掛けたものがどこかにないかという眼つきをした。けれども中には何にもなかった。上には殺風景な我楽多がらくたが、無器用に積み重ねられているだけであった。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)