憶出おもひだ)” の例文
いつも御写真に向ひ候へば、何くれと当時の事憶出おもひだし候中に、うつつとも無く十年ぜんの心に返り候て、苦き胸もしばしすずしく相成申候。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
其見世の先に普請場ふしんばがあつて、煉瓦職人の姿が其の前に見えたから、技師の話を憶出おもひだして、仕事をさせて貰はうと思つたからで。
椋のミハイロ (新字旧仮名) / ボレスワフ・プルス(著)
丁度斯うして、田圃たんぼわきに寝そべり乍ら、収穫とりいれ光景さまを眺めたの無邪気な少年の時代を憶出おもひだした。烏帽子ゑぼし一帯の山脈の傾斜を憶出した。其傾斜に連なる田畠と石垣とを憶出した。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
それまでだつて、憶出おもひださない事は無いけれど、去年逢つてからは、毎日のやうに気になつて、可厭いやな夢なんぞを度々たびたび見るの。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
蛗螽いなごを捕つたり、野鼠を追出したりして、夜はまた炉辺ろばたで狐とむじなが人を化かした話、山家で言ひはやす幽霊の伝説、放縦ほしいまゝな農夫の男女をとこをんなの物語なぞを聞いて、余念もなく笑ひ興じたことを憶出おもひだした。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
憶出おもひだした。間の許婚いひなづけはお宮、お宮」
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)