憐愍あわれみ)” の例文
米をるのだ、と笑って、それからそれへ花は咲いたのだったが、しかし、気の毒だ、可哀相に、と憐愍あわれみはしたけれども、徹頭徹尾
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
お色のっていた欄干から、二間ほど離れた一所ひとところに、五、六人の乞食こじきたかっていた。往来の人の袖に縋り、憐愍あわれみを乞うやからであった。
銅銭会事変 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
ただすと、源三はじゅつなさそうに、かつは憐愍あわれみ宥恕ゆるしとをうようなかおをしてかすか点頭うなずいた。源三の腹の中はかくしきれなくなって、ここに至ってその継子根性ままここんじょう本相ほんしょうを現してしまった。
雁坂越 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
平次の心には、この不幸な男に対する憐愍あわれみが、油のごとくにじむ様子でした。
憎悪にくしみ憐愍あわれみとをこきぜた——怒と悲との声であった。そうしてその声は水を渡り、濛気の壁を貫いて、纐纈城まで届きそうな大きい高い声でもあった。しかし返辞は来なかった。
神州纐纈城 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
それは憐愍あわれみであるようであった!
あさひの鎧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)