慰藉なぐさみ)” の例文
古本をあさることはこの節彼が見つけた慰藉なぐさみの一つであった。これ程費用ついえが少くて快楽たのしみの多いものはなかろう、とは持論である。その日も例のように錦町にしきちょうから小川町の通りへ出た。
並木 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
さながら山吹の花の実もなき色香を誇るに等しい放蕩ほうとうの生涯からは空しい痴情ちじょうの夢の名残はあっても、今にして初めて知る、老年の慰藉なぐさみとなるべき子孫のない身一ツのさびしさ果敢はかなさ。
散柳窓夕栄 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
身を切るような風吹きてみぞれ降る夜の、まだ宵ながら餅屋ではいつもよりも早くめて、幸衛門は酒一口飲めぬ身の慰藉なぐさみなく堅い男ゆえ炬燵こたつもぐって寝そべるほどの楽もせず火鉢ひばちを控えて厳然ちゃんすわ
置土産 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
自然の花が見る人に一種の慰藉なぐさみを与えたようなものかも知れない。
蒲団 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
大先生さえおかえりになったら、慰藉なぐさみも幸福も