態度ものごし)” の例文
衣服の着こなしといひ、態度ものごしといひ、気が利いてゐて、誰が見ても中京辺の物持の隠居の洒落者に相違なかつた。
茶話:12 初出未詳 (新字旧仮名) / 薄田泣菫(著)
四六時じゅう栄三郎の心にあるのはお艶のおもかげ態度ものごし、口ぶり——、あア、あの時ああいって笑ったッけ、そうそう、またいつぞやあれが軽い熱でふせった折りは……。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
あわてていたが悠然ゆったりした態度ものごしで。——併し最早そのときには前後左右から若い消防手の、声を殺そうとする笑いが彼を取り捲いていた。清次郎は真っ赤な顔で苦虫を噛みつぶしていた。
或る部落の五つの話 (新字新仮名) / 佐左木俊郎(著)
彼女は今一人の女よりはずつと若く且つ美人で、態度ものごし容姿ようすいきであつた。面長で、鼻がつんと高く、頬がつや/\して居た。けれども年増の女に比べると優し味が少い様にその時私に思はれた。
世の中へ (新字旧仮名) / 加能作次郎(著)
お市は、ちょいと渋皮のむけた、せいの高い、しじゅうにこにことほほえんでいる女であった。態度ものごしにどこかなまめいたところがあって、芸事の師匠といったような女柄であった。
巷説享保図絵 (新字新仮名) / 林不忘(著)
すると、池田氏は物を呉れる者に附物つきもの鷹揚おうやう態度ものごしで、ポケツトに手を突込んだと思ふと、何か知らつかみ出して黙つて相手の掌面てのひらに載せて呉れる。——見ると、使ひ古しの郵便切手である。
その激しい態度ものごしは、いまにも掴みかかっていきそうに感じられた。
恐怖城 (新字新仮名) / 佐左木俊郎(著)
二本棒のころからこの年齢としまで、死んだ撰十の下に働いて来たという四十がらみの前掛けは、いかにも苦労人めいた態度ものごしで、藤吉の問いに対していちいちはっきりと受け答えをしていた。
番頭はたつた今夫人に見せた叮嚀な素振とは打つて変つた気取つた態度ものごし
刀の真綿はすでにとりさって、ピタリ鞘におさめ、なにごともなかったような落とし差し……大きくふところ手をして、ユッタリとした態度ものごしです。伊賀の暴れン坊、女にさわがれるのも無理はない。
丹下左膳:02 こけ猿の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)