悧巧りかう)” の例文
何かひどく気のいた風を示さうとでもするやうな浅果敢あさはか悧巧りかうさだと思はれて、わざとらしい其の調子が何うにもたまらない気がしたのであつた。
風呂桶 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
後をけられて居る樣子だつたから、念の爲に表を見にやつたまでの事ですが、根が悧巧りかうぢやないから、餘計な事をして溝へ投り込まれたんでせう
自分は何も知らない癖して僕たちみたいな悧巧りかうな者に物を教へようとするのは僣越だつて彼奴あいつに云つてきかせたつけ。
ところが他の悪魔たちは、この大悪魔ほど悧巧りかうでなかつたものですから、その言葉を聞きいれません。
悪魔の尾 (新字旧仮名) / 宮原晃一郎(著)
とをで神童、十五で才子、二十はたち過ぎればなみの人、といふこともあるから、子供の時に悧巧りかうでも大人おとなになつて馬鹿ばかにならないとは限らない。だから神童と云はれるのも考へものだ」
才一巧亦不二 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
外国人は矢ツ張り目がえて居りますのネ、ゼームスつて洋琴オルガンを寄附した宣教師さんがネ、米国くにへ帰る時、ぜんの奥様に呉々くれぐれも仰つしやつたさうですよ、山木様は余り悧巧りかうだから
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
かう云ふものだと思ひあきらめて、頭のよくなることを考へ、悧巧りかうになることの工夫をし、それで気がすめば大変いゝことだとは思ふが、僕には何うにもまだそこまで悟りが出来てゐない。
椎の若葉 (新字旧仮名) / 葛西善蔵(著)
悧巧りかう者の吉太郎が教へてくれますよ。寶屋の居候で、馬鹿の宇八と、鶴龜燭臺見たいにつゐになつて居る人氣者だ」
「おじさんは子供の時に、さぞ悧巧りかうだつたでせうね」と云つたといふことがある。
才一巧亦不二 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
「本当に悧巧りかうな虫だな。」と、おぢいさんの巨人は申しました。「ちやんとこつちのいふことが分るんだ。大事にして飼つて置かうね。手荒いことをして、つまみつぶしちやいけないよ。」
漁師の冒険 (新字旧仮名) / 宮原晃一郎(著)
生活難に疲れきつて、見る影もなくしなびて居りますが、何處かこの鑄掛屋には、悧巧りかうなところが殘つて居ります。
「子供の時悧巧りかうでも大人おとなになつて馬鹿になるものがある」
才一巧亦不二 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
「いや、もう逃げて了つたらう。あんな惡く悧巧りかうな奴に逢つちや、八五郎なんどは何んの役にも立たぬ」
「さうですつてね。綺麗で愛想がよくて、悧巧りかうで、申分のないお内儀さんださうぢやありませんか」
「お由良? あの柳屋の評判娘かい——あの娘は悧巧りかう過ぎて附き合ひにくいよ。——世間で騷ぐほど綺麗ぢやねえが、お前にはお職過ぎらア、附き合はねえ方がおためだぜ」
あのお糸といふ娘は、綺麗で悧巧りかうで、申し分のない娘であつたが、少し望みが高過ぎたよ。
いかにも悧巧りかうさうで、曲者の入るのを知らずに眠りこけて居たとは思はれません。
銭形平次捕物控:274 贋金 (旧字旧仮名) / 野村胡堂(著)
身上しんしやうは肥るばかりだ——が、女は悧巧りかうなやうでも、妙なところに手ぬかりがある。