恵那山えなさん)” の例文
旧字:惠那山
この旅人は恵那山えなさんを東に望むことのできるような中津川の町をよろこび、人の注意を避くるにいい位置にある景蔵の留守宅を選んで
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
発電所は八分通り出来上っていた。夕暗にそびえる恵那山えなさんは真っ白に雪をかぶっていた。汗ばんだ体は、急にこごえるように冷たさを感じ始めた。
セメント樽の中の手紙 (新字新仮名) / 葉山嘉樹(著)
恵那山えなさん川上山かおれやま鎌沢山かまざわやまのかなたには大崩おおくずれができて、それが根の上あたりから望まれることを知らせに来るのも若い連中だ。
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
一日は一日より、白さ、寒さ、深さを増す恵那山えなさん連峰の谿谷けいこくを右手に望みながら、やがて半蔵は連れと一緒に峠の上を離れた。
夜明け前:02 第一部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
もはや恵那山えなさんへは幾たびとなく雪が来た。半蔵が家の西側の廊下からよく望まれる連峰の傾斜までが白く光るようになった。
夜明け前:02 第一部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
晴れにもよく雨にもよい恵那山えなさんに連なり続く山々、古代の旅人が越えて行ったという御坂みさかの峠などは東南にそびえて
夜明け前:04 第二部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
「お民、来てごらん。きょうは恵那山えなさんがよく見えますよ。妻籠つまごの方はどうかねえ、木曾川の音が聞こえるかねえ。」
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
恵那山えなさんを最高の峰とする幾つかの山嶽さんがく屏風びょうぶを立て回したように、その高い街道の位置から東の方に望まれる。
夜明け前:03 第二部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
わずかに美濃境みのざかい恵那山えなさんの方に、その高い山間やまあい谿谷けいこくに残った雪が矢の根の形に白く望まれるころである。
夜明け前:03 第二部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
恵那山えなさんへは雪の来ることも早い。十月下旬のはじめには山にはすでに初雪を見る。十一月にはいってからは山家の子供の中には早くも猿羽織さるばおりを着るものがある。
夜明け前:04 第二部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
路傍には大きく黒ずんだ岩石がはい出して来ていて、広い美濃みのの盆地の眺望ちょうぼうは谷の下の方にひらけている。もはや恵那山えなさんの連峰へも一度雪が来て、また溶けて行った。
夜明け前:02 第一部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
恵那山えなさん谿谷けいこくの方に起こるさかんな雪崩なだれは半蔵が家あたりの位置から望まれないまでも、雪どけの水の音は軒をつたって、毎日のようにわびしく単調に聞こえている。
夜明け前:03 第二部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
恵那山えなさんの裏山つづきに御坂峠みさかとうげというところがあります。木曾きその御坂とはその峠のことです。
力餅 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
幼い時分からわたしの好きな恵那山えなさんは、もう一度自分を迎えてくれるように見えました。
力餅 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
もはや、二百十日もすでに過ぎ去り、彼岸ひがんを前にして、急にはげしい夕立があるかと思うと、それの谷々を通り過ぎたあとには一層恵那山えなさんも近くあざやかに見えるような日が来た。
夜明け前:04 第二部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
恵那山えなさんは村から近く望まれる山です。
力餅 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)