恒産こうさん)” の例文
よしてもその日に差支えないと思えば、直ぐに喧嘩をする。つまり恒産こうさんがある為めに、一生席が暖まらないというようなことになる
負けない男 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
したがって恒産こうさんのない以上科学者でも哲学者でも政府の保護か個人の保護がなければまあ昔の禅僧ぐらいの生活を標準として暮さなければならないはずである。
道楽と職業 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
いつこの生活が突き崩されるか、それは図り知れたものではない。恒産こうさんなければ恒心無しと云うではないか。いつどんなへまをしでかすか、僕にはとても自分が信用出来ないのである。
落穂拾い (新字新仮名) / 小山清(著)
孟子もうしのいわゆる民のごときは恒産こうさんなくんばって恒心こうしんなしで、心も魂も堕落こそすれ、とても明徳を明らかにするちょう人生の目的を実現する方向に進めるわけのものではない、ということである。
貧乏物語 (新字新仮名) / 河上肇(著)
多少恒産こうさんがあると、僕のような我儘ものは何処へ行っても勤まらないというんだ。或はうかと思っていたところへ、君からウンと痛めつけられた。
負けない男 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
小野さんがわが本領を解する藤尾ふじおたよりたくなるのは自然のすうである。あすこには中以上の恒産こうさんがあると聞く。腹違の妹を片づけるにただの箪笥たんすと長持で承知するような母親ではない。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
日々富を論じ貧を論じてあえてむことなきゆえんのものは、かつて孟子もうしの言えるがごとく、恒産こうさんなくして恒心こうしんあるはただ士のみよくするをなす、民のごときはすなわち恒産なくんばって恒心なく
貧乏物語 (新字新仮名) / 河上肇(著)
恒産こうさんあるものは恒心こうしんあり。あにいましめざる可けんや」
負けない男 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)