怨言えんげん)” の例文
ほかのことに思わせて宮は怨言えんげんらしておいでになるのを、中の君はただかおるのことでまじめに恨みを告げておいでになるものと思い込み
源氏物語:53 浮舟 (新字新仮名) / 紫式部(著)
「彼の兵馬の権を以てすれば、この蜀を取ることだってできる。彼がしきりに蜀君の暗愚をなじったり怨言えんげんいているのはその下心ではないか」
三国志:11 五丈原の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「貴女のお手紙にある、変ったと云うのは、どういう意味ですか……」と、つい皮肉な怨言えんげんを云ってしまった。
貞操問答 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
けれどもその後私は毎度本人にうて仮初かりそめにも怨言えんげんを云た事のない所ではない、わざと旧恩を謝すると云うおもむきばかり装うて居る中に、又もやその大切な原書を盗写ぬすみうつしたこともある。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
今度はお登和が張合なく「誠に不出来でお口に合いますまいから」と謙遜の言葉も大原の耳には怨言えんげんらしく聞え「イエ戴きます、何でも戴きます。貴嬢あなたのお手料理なら死ぬまで辞しません」
食道楽:春の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
しまいには「あなたは私を嫌っていらっしゃるんでしょう」とか、「何でも私に隠していらっしゃる事があるに違いない」とかいう怨言えんげんも聞かなくてはなりません。私はそのたびに苦しみました。
こころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
もし敵に勝たば、汝らの功もみな帝に奏し、魏の国福を共によろこぶ存念であるのだ。——然るに、みだりに上将の言行を批判し、あまっさえ怨言えんげんを部下に唱えて士気を弱むるなど、言語道断である
三国志:11 五丈原の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)