怨恨ゑんこん)” の例文
斯様かうなればたがひ怨恨ゑんこんかさなるのみであるが、良兼の方は何様どうしても官職を帯びて居るので、官符はくだつて、将門を追捕すべき事になつた。
平将門 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
同胞兄弟です、僕は暖炉ストーブに燃え盛る火焔くわえんを見て、無告の坑夫等の愁訴する、怨恨ゑんこんの舌では無いかと幾度いくたびも驚ろくのです
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
その間に忠左衞門の末の娘のお初が輝くばかりに美しく生ひ立ち、宗吉との間に淡い戀心が育つて、宗吉の怨恨ゑんこんも、暫らくは薄れて行きました。
母にのみ見えて公子に見えざる一事は、我が戯曲の中にも其例を得るに難からず、然れども怨恨ゑんこんする目的物に見えずして狂公子にのみ見ゆるは、其倫を我文学に求むるを得ず。
他界に対する観念 (新字旧仮名) / 北村透谷(著)
自分の全身にはほとん火焔くわえんを帯びた不動尊もたゞならざる、憎悪ぞうを怨恨ゑんこん嫉妬しつとなどの徹骨の苦々しい情が、寸時もじつとして居られぬほどにむらがつて来て、口惜くやしくつて/\、忌々いま/\しくつて/\
重右衛門の最後 (新字旧仮名) / 田山花袋(著)
死の空にさまよひ叫ぶ怨恨ゑんこん毒嘴どくはしの鳥。
(新字旧仮名) / 石川啄木(著)
どちらにしても強くは言張り難いが、「然而将門尚与伯父宿世之讐」といふ句によつて、何にせよ此事が深い怨恨ゑんこんになつた事と見て差支さしつかへは無い。
平将門 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
平次は此處に重大な怨恨ゑんこんが潜んで居さうな氣がしたのです。