たちま)” の例文
わざと三田の給仕役は自分ときめてゐたが、變つた女が目の前にあらはれると、たちまち好奇心を動かす野呂は、部屋を距てた向ふから
大阪の宿 (旧字旧仮名) / 水上滝太郎(著)
すると歯にもとほる位、苦味の交つた甘さがある。その上彼の口の中には、たちまち橘の花よりも涼しい、微妙な匂が一ぱいになつた。
好色 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
たちまち争闘が始まりました。たちまち人殺しが行われました。が併し直接その娘に乱暴をする者はありませんでした。それほど娘は神々しく敬虔であったのでございます。
蟒も流石に眞面目な顏をしてゐたが、商賣人だけに氣を取り直して、たちまち田原と調子を合せて、室内の陽氣を高めようとするのであつた。
大阪の宿 (旧字旧仮名) / 水上滝太郎(著)
三田が冗談に云つた言葉がきつかけになつて、おつぎがおみつの事を話すと、野呂はたちまち乘氣になり、是非ともその娘に頼んでくれといふのだつたさうだ。
大阪の宿 (旧字旧仮名) / 水上滝太郎(著)