怡然いぜん)” の例文
官兵ようやく多く、賊勢日にしじまるに至って賽児を捕え得、まさに刑に処せんとす。賽児怡然いぜんとしておそれず。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
「それを聞いてどう為る。ああ貴様は何か、金でも貸さうと云ふのか。Noノオ thankサンクじや、赤貧洗ふが如く窮してをつても、心は怡然いぜんとして楽んでをるのじや」
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
知れる目よりはこの大山たいさん巌々がんがんとして物に動ぜぬ大器量の将軍をば、まさかの時の鉄壁とたのみて、その二十二貫小山のごとき体格と常に怡然いぜんたる神色とは洶々きょうきょうたる三軍の心をも安からしむべし。
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
如何いか金銭マネエすべての力であるか知らんけれど、人たる者は悪事を行つてをつて、一刻でも安楽に居らるるものではないのじや。それとも、君は怡然いぜんとして楽んでをるか。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
然し茶に招かれて席に参した以上は亭主が自ら点じてすすめる茶を飲まぬという其様そんな大きな無礼無作法は有るものでないから、一団の和気を面にたたえて怡然いぜんとして之を受け
蒲生氏郷 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
たゞこれに打ち對つて怡然いぜんとしてしん喜び心樂めばそれでいので、甲地乙地の比較をしたり上下をしたりするのは第二第三の餘計な事で、眞にいはゆる蛇足をゑがくものであるから
華厳滝 (旧字旧仮名) / 幸田露伴(著)