忿怒ふんど)” の例文
義雄の態度は寸毫すんがう假借かしやくしないと云ふ勢ひだ。そして、忿怒ふんどの爲めに、相手を見つめる目が燃えて來た。昇は然し左ほど熱しない。
泡鳴五部作:05 憑き物 (旧字旧仮名) / 岩野泡鳴(著)
教員は驚き慌ててそれを拾つたが、忿怒ふんどすることをめて、やはり父がしたやうに炉の炎をしばらくの間三稜鏡で眺めてゐた。
念珠集 (新字旧仮名) / 斎藤茂吉(著)
王植は城門を擁してきびしく備えていたが、却って関羽のため、忿怒ふんどの一刃を浴びて非業ひごうな死を求めてしまった。
三国志:06 孔明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
忿怒ふんどの面火玉のごとくし逆釣ったる目を一段視開みひらき、畜生、のっそり、くたばれ、と大喝すれば十兵衛驚き、振り向く途端にまっ向より岩も裂けよと打ち下すは
五重塔 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
一人は忿怒ふんど懊悩おうのうに、日頃の冷静を失った、園田敬太郎氏、それに手を引かれて、さからい乍ら入って来たのは、東京新報の女記者、あの匂いこぼるるような、美しい園花枝です。
女記者の役割 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
……もうすぐ此処ここも火になる、このままいれば焼け死ぬだろう、そのことがはっきりわかると俊恵はつきあげるように忿怒ふんどを感じた、死を怖れるのではない、寺を焼かれることが口惜しいのでもない
荒法師 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
と、曹操は、獅子のごとく忿怒ふんどして、残る九本の指をみな斬り落せと獄吏に命じた。
三国志:05 臣道の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
周囲の子供等を引率して学校の授業も何もかまはずに山や沢に出掛けるので、そのやり方が何処どこか猛烈なところがあつた。一度教員は忿怒ふんどして学校の梁木はりきにその童子をつるして折檻せつかんしたことがある。
念珠集 (新字旧仮名) / 斎藤茂吉(著)
呂布は、忿怒ふんどした。
三国志:04 草莽の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)