忠相ただすけ)” の例文
スルスルと障子を開けて顔を出した金山寺屋の音松に、忠相ただすけは、にこやかな笑顔を向けて、声だけは、叱咤しったするように激しかった。
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
南の奉行は大岡越前守忠相ただすけで、享保二年以来、十年以上もここに勤続して名奉行の名誉ほまれを頂いている人物であった。
黄八丈の小袖 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
大岡越前守忠相ただすけが、南町奉行として、伊勢山田から栄転してきて、ここに江戸の治安陣を双璧そうへきすることとなった。
大岡越前 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
その場内に大岡越前守忠相ただすけの遺品が陳列してあったが、その中に子爵大岡忠綱氏の出品に係るけぬき四丁があって
法窓夜話:02 法窓夜話 (新字新仮名) / 穂積陳重(著)
忠相ただすけじゃ」
大岡越前の独立 (新字新仮名) / 直木三十五(著)
が、どうして忠相ただすけが、このさく爺さんの前身を知っていたか、また、それをいかにして柳生へ通じたか、くわしいことはわからないけれど。
丹下左膳:03 日光の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
いや、大岡十家のうちの一人であり、また亀次郎とは、従弟いとこにあたる市十郎——すなわち越前守忠相ただすけもまた、あやうくも、同じ危険な崖ぷちを人生の道として歩いたうちの一人だった。
大岡越前 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
忠相ただすけは笑うと、キチンとそろえた小肥こぶとりの膝が、こまかくゆれる。それにつれて、かたわらの燭台も微動する。灯がチラついて、小さな影が散る——。
丹下左膳:03 日光の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
大岡忠相ただすけという人間が、その一犯人との、しかも遠い以前の関係などから、町奉行の現職も、生涯をも、滅茶滅茶に失うであろうとしても、なお貴方は、御法令一点張りで、解決しきるお心かの
大岡越前 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
越前守忠相ただすけは、返辞がないのでちょっとふすまごしに耳をそばだてたが、用人の伊吹いぶき大作は居眠ってでもいるとみえて、しんとしてったようなしずけさだ。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
うまくお艶の身柄を忠相ただすけへ押しつけおおせた泰軒、さっそく庭へおり立つところを忠相が呼びとめたのだった。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
砂にすわって待っていると、奉行の忠相ただすけは、伊吹大作いぶきだいさくその他をしたがえて、すぐ出て来て座についた。
巷説享保図絵 (新字新仮名) / 林不忘(著)
この淡路守の相手は、大岡越前守おおおかえちぜんのかみなのである。江戸南町奉行大岡越前守忠相ただすけである。老中、若年寄、御小人目附おこびとめつけ、寺社奉行、勘定奉行、町奉行と来て、これを四十八高という。
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
その愚楽老人の意見は、この忠相ただすけ泰軒たいけん愚楽ぐらくの三人会議の席上でまとまることがおおい。
丹下左膳:02 こけ猿の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
「ふんそうか」忠相ただすけが笑うと、切れ長の眼尻めじりに、皺が寄るのだ。さざなみのような皺だ。しぼの大きなちりめん皺だ。忠相は、そのちりめん皺を寄せて、庭のほうへ膝を向けた。
巷説享保図絵 (新字新仮名) / 林不忘(著)
忠相ただすけが室内から声をはげますと、そとの伊吹大作はすこしく平静をとりもどして
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
忠相ただすけは、こう言って、そのしもぶくれの柔和な顔をほころばせて、客を見た。
丹下左膳:02 こけ猿の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
お美夜ちゃんを帰すとすぐ、急に、忠相ただすけの顔に真剣の色がみなぎった。
丹下左膳:03 日光の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
と言いかけて、忠相ただすけはまた、相手へ眼をやった。
丹下左膳:02 こけ猿の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)