忙々いそがはし)” の例文
つひに彼はこのくるしみを両親に訴へしにやあらん、一日あるひ母と娘とはにはかに身支度して、忙々いそがはしく車に乗りて出でぬ。彼等はちひさからぬ一個ひとつ旅鞄たびかばんを携へたり。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
呼べどさけべど、宮は返らず、老婢は居らず、貫一は阿修羅あしゆらの如くいかりて起ちしが、又たふれぬ。仆れしを漸く起回おきかへりて、忙々いそがはし四下あたりみまはせど、はや宮の影は在らず。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
彼等は幕の開かぬ芝居に会へる想して、あまりに落着の蛇尾だび振はざるを悔みて、はや忙々いそがはしきびすかへすも多かりけれど、又見栄みばえあるこの場の模様に名残なごりを惜みつつ去りへぬもありけり。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)